「釣りに行ってみたい」
釣りをしていると、ときどき家族や友人からそんなことを言われる。
自分一人なら、場所も時間も仕掛けもある程度自由に決められる。
でも、初めて釣りをする人を連れていくとなると、話は少し変わってくる。
何を釣らせよう。
どこなら安全だろう。
何時からなら無理なく楽しめるだろう。
そして、釣れなかったとしても「楽しかった」と思って帰ってもらえるだろうか。
先日、小学6年生の甥っ子から「釣りをしたい」と言われた。
そこに僕の父も加わって、気がつけば父、僕、甥っ子の3世代釣行になった。
そこから約2週間。
僕は「何を釣らせるか」「どこへ行くか」「どんな仕掛けにするか」を、かなり真剣に考えることになった。
この記事では、そのとき実際に考えたことを振り返りながら、釣り初心者を連れていくときに経験者側が準備しておきたいことをまとめてみたい。
初心者を連れていく釣りは、自分一人の釣りとは違う
普段の釣行なら、「今日はハタを狙いたい」「朝マヅメに入りたい」「あのゴロタを探ってみたい」と、自分がやりたい釣りを基準に決められる。
でも初心者を連れていく日は、自分が釣りたい魚より、同行者が安全に楽しめるかを先に考えた方がいい。
足場は安全か。
トイレはあるか。
疲れたら休めるか。
仕掛けは難しすぎないか。
釣果だけでなく、そこまで含めて一日の釣りを組み立てる。
僕自身、今回の3世代釣行を考える中で、いつもの釣りとは優先順位がかなり違うことに気づいた。
① まず「何を釣らせたいか」を決める
僕が最初に考えたのは場所ではなく、ターゲットだった。
初心者に釣りを楽しんでもらうなら、できれば何か一匹は釣ってもらいたい。
一方で、せっかくなら釣った魚を持ち帰って食べる楽しさも経験してほしい。
ちょうどその少し前にホウボウを食べる機会があり、「こういう魚が釣れたら面白いな」と考えたこともあった。
ただ、初心者を連れていく日のターゲットは「自分が釣りたい魚」だけで決めない方がいい。
- 釣れる可能性
- 仕掛けの扱いやすさ
- 釣り場の安全性
- 季節
- 同行者の年齢や体力
これらをまとめて考えて、現実的なターゲットを決める。
「何を釣るか」は、その後の場所、タックル、仕掛けを決める起点になる。
② ポイントは「釣れそう」より先に「安全そう」で絞る
魚影の濃そうな場所を探していると、どうしても魅力的な磯やゴロタ、テトラ帯が目に入る。
自分一人なら選択肢になる場所でも、初心者と一緒なら話は別だ。
今回、僕が場所選びでかなり重視したのも足場だった。
「魚がいそうか」と同じくらい、「初心者が普通に立って釣りができるか」を見る。
さらに、駐車場からの距離、トイレ、休憩できる場所、暑くなったときに撤退しやすいかなども確認しておく。
立入禁止区域には入らないことはもちろん、天候や波によって危険になる場所なら候補から外す。
釣れる可能性が少し下がったとしても、安全に楽しめる場所を選ぶ。
初心者を連れていく日は、それでいいと思う。
③ 仕掛けは「釣れる」だけでなく「扱いやすい」を考える
経験者なら多少複雑な仕掛けでも、自分でトラブルを直せる。
初心者はそうではない。
ライントラブルが起きる。
根掛かりする。
仕掛けが絡む。
そのたびに釣りが止まってしまえば、実際に竿を出している時間はどんどん短くなる。
だから初心者用の仕掛けは、釣果だけでなくトラブルの少なさと復旧のしやすさも重要になる。
予備の仕掛けをあらかじめ作っておいたり、交換するだけで復帰できる状態にしておくと、現場ではかなり楽になる。
④ タックルは現地で調整するより、できるだけ家で完成させる
今回の釣行では、対象魚を想定しながらタックルや仕掛けの組み合わせを事前にかなり考えた。
初心者を連れていくなら、これはやっておいて損はない。
リールにラインを巻く。
リーダーを組む。
必要なら仕掛けをセットしておく。
ドラグやリールの操作も確認しておく。
現地へ着いてから経験者が30分準備している間、初心者は基本的に待つしかない。
できるところまで家で済ませておけば、海へ着いたらすぐ釣りを始められる。
初めての人にとっては、その「待たなくていい」ことも意外と大きい。
⑤ 予備の仕掛けは、自分の分より多めに
初心者との釣りでは、仕掛けの消耗を普段より多めに見積もっておきたい。
根掛かりやライントラブルは当然起こる。
そこで「もう仕掛けがない」となれば、その人の釣りは終わってしまう。
同じ仕掛けを複数用意して、切れたらすぐ交換できるようにしておく。
自分の釣り道具を増やすというより、同行者の釣り時間を減らさないための予備と考えると分かりやすい。
⑥ 朝マヅメより「一日楽しめる時間」を選ぶこともある
釣果だけを考えれば、朝マヅメをしっかり狙いたくなる。
僕も最初はそう考えた。
でも今回の同行者は、小学6年生の甥っ子と父。
真夏に極端な早起きをして睡眠時間を削れば、日が昇ってからの体力低下や暑さへの負担が大きくなる。
そこで、朝マヅメを完璧に取ることより、無理のない時間に集合して釣りを始める方を選んだ。
一番釣れる時間に合わせるのではなく、一番楽しく帰ってこられそうな時間に合わせる。
初心者を連れていく釣りでは、そんな判断も必要だと思う。
⑦ 天気・波・風は前日だけでなく当日も確認する
海の状況は変わる。
前日に問題がなくても、当日になって風が強くなったり、波が高くなったりすることもある。
そのため、天気予報は前日に一度見て終わりではなく、出発前にも確認しておきたい。
そして危険だと感じたら、場所を変えるか、中止する。
せっかく準備したから。
せっかく早起きしたから。
そう思うほど判断は鈍りやすいけれど、初心者を連れているならなおさら無理をしない。
⑧ ライフジャケット・靴・連絡手段は経験者側から確認する
初心者は、何が危険なのか自体をまだ知らない。
だから「各自、安全装備を用意してきて」で済ませるのではなく、経験者側から確認したい。
- 体格や釣り場に合ったライフジャケット
- 釣り場に合った滑りにくく脱げにくい靴
- 防水対策をしたスマートフォン
- 帽子や季節に合った服装
- 十分な飲み物
海上保安庁も、釣りで最低限必要な装備としてライフジャケット、釣り場に応じた履物、防水ケースに入れた携帯電話などを挙げている。
特に初心者と一緒なら、本人が「大丈夫」と言っているかではなく、経験者が実際に装備を確認するくらいでいいと思う。
釣り初心者が用意しておきたい持ち物については、こちらの記事にまとめている。
⑨ 「釣らせる」より「釣りを止めない」ことを意識する
初心者と一緒に釣りをして感じるのは、経験者の役割は必ずしも魚を釣らせることだけではないということ。
ラインが絡まったら直す。
根掛かりしたら外す。
仕掛けが切れたら交換する。
魚が掛かったら少し手助けする。
つまり経験者は、自分の釣りをしながら小さなトラブルを取り除いて、初心者が竿を出していられる時間を増やす。
この日は、自分の釣果を追う日ではない。
そう割り切ってしまった方が、結果的にみんなで楽しめると思う。
⑩ 「釣れなかったら失敗」にしない
そして、これが一番大事かもしれない。
釣りは、準備したからといって必ず釣れる遊びではない。
今回の3世代釣行も、お土産になるような魚は釣れなかった。
釣れたのは、リリースサイズのカサゴが数匹とエソが数匹、それからウミヘビが一匹。
釣果だけを見れば、大成功とは言えないのかもしれない。
でも、甥っ子も父も楽しんでくれた。
朝、海から昇ってくる太陽を見た。
その日の出を、僕の父が夢中になって写真に撮っていた。
僕は少し離れたところから、その姿を写真に撮った。

後から振り返ってみると、僕にとって残ったのは魚の数より、むしろそっちの景色だった。
初心者を連れていく前日のチェックリスト
- □ 天気・風・波を確認した
- □ 釣り可能な場所・立入禁止区域を確認した
- □ 駐車場・トイレ・休憩場所を確認した
- □ 同行者の体力に無理のない時間を決めた
- □ タックルをセットした
- □ 予備の仕掛けを多めに用意した
- □ ライフジャケットを確認した
- □ 靴・服装を確認した
- □ 飲み物・暑さ寒さ対策を用意した
- □ スマートフォンの充電・防水対策を確認した
- □ 行き先・帰宅予定を家族などへ伝えた
全部準備したとしても、魚が釣れる保証はない。
でも、安全に楽しめる確率と、「また行きたい」と思ってもらえる確率はきっと上げられる。
まとめ|初心者を連れていく日の成功は、釣果だけでは決まらない
初心者を釣りに連れていくなら、まず安全に釣りができる場所を選ぶ。
扱いやすい仕掛けを準備して、できるだけ現地で待たせない。
同行者の年齢や体力を考えて、無理のない時間を選ぶ。
そして、魚が釣れなくても楽しめる一日にする。
釣りを始めたばかりの人にとって、その日の一匹はもちろん忘れられないものになると思う。
でも、もしかしたら何年か経ったあとに思い出すのは、魚ではないかもしれない。
まだ暗い時間に一緒に車へ乗ったこと。
海が少しずつ明るくなっていったこと。
隣で誰かが夢中になって竿を振っていたこと。
そして、帰りの車で「楽しかった」と言ってくれたこと。
そんな一日なら、釣れた魚が少なくても、十分いい釣行だったと思う。
釣れた日も、釣れなかった日も。


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