夏の釣りが好きだ。
朝の海、強い日差し、青い空。
ハタを狙うにも、青物を狙うにも、夏から秋にかけての海には独特の楽しさがある。
でも一度、僕はその暑さを少し甘く見ていた。
夜中から釣りを始め、そのまま昼近くまで竿を振っていた日のこと。
日が高くなってから、明らかに身体がおかしいと感じた。
そのとき手元にあったのが、魚を冷やすために持ってきていた板氷だった。
タオル越しに首筋や脇の下などを冷やし、釣りをやめて休んだ。
身体が冷えていく感覚があり、結果的に大事には至らなかった。
ただ、今振り返ると一番大切だったのは、「氷が効いた」ことではない。
暑さで身体がおかしいと感じた時点で、釣果より自分の身体を優先することだったと思う。
この記事では、そんな経験も踏まえながら、夏の釣りで僕自身が意識したい熱中症対策を、公的機関が案内している情報とあわせて整理してみたい。
夏の釣りは、思っている以上に熱中症になりやすい
釣りでは、長時間屋外にいる。
さらに海辺は日差しを遮る場所が少ないことも多く、釣りに集中していると休憩や水分補給を忘れてしまうこともある。
「あと一投だけ」
「あそこまで探ったら休もう」
そうしているうちに時間が経つ。
厚生労働省では、熱中症の症状として、めまい、立ちくらみ、手足のしびれ、筋肉のこむら返り、気分不良、頭痛、吐き気、倦怠感などを挙げている。
いつもと違うと感じたら、「まだ釣りができるか」ではなく、まず休むことを考えたい。
気温だけではなく「暑さ指数(WBGT)」を見る
夏の釣行前に確認したいのが、気温だけではなく暑さ指数(WBGT)。
WBGTは、気温だけでなく、湿度や日射・輻射なども取り入れて熱中症の危険性を判断するための指標だ。
環境省の熱中症予防情報サイトでは、当日だけでなく予測値も確認できる。
目安としてWBGTが28以上では「厳重警戒」、31以上では「危険」とされ、運動については31以上で原則中止とされている。
釣りは競技スポーツとは違うけれど、炎天下で長時間立ち続けたり、歩いたり、キャストを繰り返したりする。
僕なら夏は天気予報と一緒にWBGTも確認して、「今日は何時まで釣るか」を出発前から考えておきたい。
① 真夏は「釣れる時間」だけでなく「安全に釣れる時間」を考える
夏の釣りでは、朝マヅメを狙うこと自体が暑さ対策にもなる。
ただし、朝から始めたから安心というわけではない。
日が昇れば気温は上がっていく。
夜中から釣りをしている場合は、そこに睡眠不足や疲労も重なる。
僕が暑さで危険を感じた日も、夜中から昼近くまで釣りを続けていた。
今なら「暑くなったら考える」ではなく、最初から撤収する時間をある程度決めておくと思う。
② 喉が渇く前から、こまめに水分・塩分を補給する
厚生労働省は、喉の渇きを感じていなくても、こまめに水分・塩分や経口補水液などを補給するよう案内している。
釣りでは両手がふさがっていたり、ポイント移動を繰り返したりするので、飲み物をバッグの奥へ入れてしまうと意外と飲まなくなる。
すぐ手に取れる場所に飲み物を入れておき、休憩と水分補給をセットにしておきたい。
汗を大量にかく状況では、水だけでなく塩分も意識する。
③ 帽子・服装・日陰で、身体に熱をためない
身体を冷やす以前に、できるだけ熱をためない工夫も大切。
- 帽子をかぶる
- 通気性のよい服装を選ぶ
- 直射日光を避ける
- 休憩では日陰や冷房のある場所へ移動する
車で釣りに行くなら、休憩時にエアコンの効いた車内へ戻れることも大きい。
ただし、炎天下に停めた車内は非常に高温になるため、乗り込んですぐ安全な休憩場所になるとは限らない。十分に換気・冷房してから利用したい。
④ 休憩は「疲れてから」ではなく先に取る
釣りをしていると、魚の反応が出始めたときほど休みたくなくなる。
でも、身体がおかしくなってから休むのでは遅い場合がある。
環境省の運動指針では、WBGT25以上で積極的な休憩、28以上では10〜20分おきの休憩などが示されている。
釣りでも「何時間も休まず続ける」のではなく、暑さに応じて意識的に竿を置く時間を作りたい。
⑤ 氷を持っていくと、飲み物以外にも使える
僕が夏の釣りで改めて価値を感じたのが、氷だった。
もともとは魚を冷やすために持っていった板氷。
暑さで身体に異変を感じたとき、それをタオル越しに首筋や脇の下などへ当てて身体を冷やした。
厚生労働省も、熱中症が疑われる場合には衣服をゆるめ、首の回り、脇の下、足の付け根などを冷やすことを案内している。
つまり、魚や飲み物を冷やすために持っていく氷は、万が一の身体冷却にも使える。
ただし、氷で冷やせばそのまま釣りを続けていいという意味ではない。
身体に異変を感じたら、まず釣りを中断して涼しい場所へ移動する。
ここは僕自身、以前より強く意識するようになった。
氷のうなら、身体を冷やす用途として使いやすい
板氷でも冷却はできたけれど、身体を冷やす用途まで考えるなら氷のうを一つ用意しておく方法もある。
氷と水を入れて使えるため、首周りなどへ当てやすい。
夏の釣りだけでなく、キャンプやスポーツなどにも使えるので、クーラーボックスへ一つ入れておくのもいいと思う。
保冷剤もクーラーボックスに入れておく
氷や冷たい飲み物をできるだけ長く保つため、保冷剤も活用したい。
釣った魚の保冷だけでなく、飲み物や冷却用品を冷たい状態に保つ意味でも役立つ。
僕なら夏の釣行では、「魚を冷やすためのクーラー」だけでなく、自分を冷やせるものが残っているかも意識しておきたい。
熱中症かも?と思ったときの対応
熱中症が疑われる症状が出たら、「もう少しだけ釣る」はやめる。
厚生労働省が案内している基本的な対応は次のようなもの。
- 涼しい場所へ移動する
- 衣服をゆるめる
- 身体を冷やす
- 意識がはっきりして自力で飲める場合は、水分・塩分などを補給する
特に首周り、脇の下、足の付け根などを冷やす。
そして、自力で水分が取れない場合や意識がおかしい場合には、ただちに救急隊を要請する。
頭痛、嘔吐、強い倦怠感、集中力や判断力の低下などがある場合も、「少し休めば大丈夫」と自己判断せず、医療機関への受診を考えたい。
一人で釣りをするときほど「まだ大丈夫」を信用しすぎない
一人で釣りをしていると、自分でやめる判断をしなければ誰も止めてくれない。
魚の反応がいい。
潮が動き始めた。
あと少しで時合いかもしれない。
釣りをしていれば、続けたい理由はいくらでも出てくる。
だからこそ、夏は出発前に撤収基準を決めておく。
暑さ指数が高すぎる。
飲み物が残り少ない。
頭痛や吐き気、めまいなど、いつもと違う症状が出た。
そんなときは、魚より先に帰る準備をする。
初心者や子どもを連れていくなら、さらに余裕を持つ
初心者や子どもを連れていく釣りなら、自分一人のとき以上に余裕を持って計画したい。
以前、甥っ子と父を連れて3世代で釣りへ行ったときも、真夏に極端な早起きをして朝マヅメを完璧に狙うより、睡眠や日中の体力まで考えて時間を決めた。
釣れる可能性を少し上げることより、一日を安全に楽しめることを優先した。
初心者向けの基本的な持ち物はこちらの記事にまとめている。
夏の釣りへ行く前の暑さ対策チェックリスト
- □ 天気予報を確認した
- □ 暑さ指数(WBGT)を確認した
- □ 十分な飲み物を用意した
- □ 塩分補給できるものを用意した
- □ 帽子を用意した
- □ 日差し・暑さに適した服装にした
- □ 氷・氷のうなど冷却できるものを用意した
- □ 休憩できる場所を確認した
- □ 撤収する時間・基準を考えた
- □ 体調・睡眠不足がないか確認した
全部やっても、熱中症の可能性をゼロにできるわけではない。
だから最後は、自分の身体の変化に気づいたら無理をしないこと。
まとめ|「あと一投」より、無事に帰ること
あの日、僕は魚を冷やすために持っていった氷で、自分の身体を冷やすことになった。
その経験から、夏のクーラーボックスを見る目が少し変わった。
魚を新鮮に持ち帰るためのもの。
冷たい飲み物を入れておくもの。
そして万が一のとき、自分を冷やせるものを持っていくための箱でもある。
夏の海は楽しい。
だからこそ、その楽しさに夢中になりすぎないようにしたい。
時合いが来そうでも。
あと一投したくても。
身体がおかしいと感じたら、竿を置く。
魚より先に、自分を無事に持ち帰る。
それも、夏の釣りで忘れたくない準備の一つだと思う。

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