最初から、パックロッドが好きだったわけではない。
というより、昔は「パックロッド」という言葉に、今ほど特別なものを感じていなかったと思う。
ただ、釣りに行きたかった。
車ではなく、電車で海へ向かうことが多かった頃。
長いロッドを抱えて移動するより、小さく畳んで持っていける方が都合がよかった。
そんな理由で手にした一本が、僕とパックロッドとの始まりだった。
それから何年も経った。
気づけば、ベイトロッドも、ライトゲーム用も、9ftを超えるMHクラスも使ってきた。
釣った魚もずいぶん増えた。
カサゴ、メバル、キジハタ、アカハタ。
青物、シーバス、マゴチ。
アナゴにウツボ、タコ、エイまで。
こうして振り返ってみると、僕はずっとパックロッドと一緒に海へ行っていたらしい。
今日は少し、昔の道具から順番に辿ってみようと思う。
1本目。魚が釣れるまで帰らなかった頃
最初の一本は、ワールドモンスターのベイトモデル。
Lクラスだった。
当時の僕は、今以上にカサゴを追いかけていた。
そして、釣りへ行くときの移動手段はもっぱら電車。
だから、電車へ持ち込めて、移動の邪魔にならないコンパクトなロッドを探していた。
そこで見つけたのがワールドモンスターだった。
このロッドを見ると思い出す場所がある。
横須賀の三春町。
あの頃は、あそこの堤防へ本当によく通った。
始発で海へ向かって、カサゴを探す。
釣れない。
それでも投げる。
まだ釣れない。
気がつけば夕方になって、それでも釣れなければ続ける。
今思えば笑ってしまうけれど、カサゴが釣れるまで、始発から終電まで粘っていたこともあった。
効率がいい釣りだったとは、とても言えない。
でも、魚を一匹釣ることが今よりずっと大きな出来事だった頃だ。
この一本では、カサゴだけではなくいろいろな魚を釣った。
メーターを超えるダイナンアナゴ。
霞ヶ浦ではアメリカナマズも狙った。
カープフィッシングにも挑戦した。
海だけではなく、「これで何が釣れるだろう」といろいろな場所へ持っていった。
途中、一度折れた。
普通なら、そこで役目を終えていたのかもしれない。
でも補修した。
そして、その後も海へ連れていった。
補修したそのロッドで、今度はキジハタまで釣った。
だから今も、現役だ。
たぶんこの一本は、僕にとって「最初のパックロッド」というだけではない。
とにかく魚を釣りたかった頃の自分が残っている一本なんだと思う。
2本目。いつの間にか、いつも一緒にいるロッドになった
次に手にしたのが、XESTA Black Star Mobile S74 Multi Tripper。
このロッドについては、すでに別の記事でもずいぶん書いた。
妻からもらったクリスマスプレゼントだったこと。
0.8〜1.5gほどのジグヘッドを使って、メバルを追いかけてきたこと。
出張先にも持っていって、40cm近いクロソイを釣ったこと。
60cmほどの太刀魚。
50cmほどのカレイ。
そして、観音崎で釣った29cmのメバル。
もう一匹、忘れられないメバルがいる。
杉田臨海緑地で釣り上げた直後、僕の手元から海へ帰っていった一匹。
サイズを測ることすらできなかった。
だから本当に尺があったのかは、今となっては分からない。
僕の中では今も、「幻の尺メバル」だ。
この一本には、本当にいろいろな魚との記憶がある。
でも、改めて考えてみると、このロッドの特別さは釣った魚の数や大きさだけではない気がする。
一番、一緒に出かけている。
釣りへ行くとなれば、とりあえず持っていく。
メバリングをする予定がなくても積んでいく。
結局、一度もケースから出さずに帰ってくる日だってある。
それでも次の釣行になれば、また持っていく。
使うかどうかも分からないロッドを、なぜ毎回持っていくのか。
自分でもうまく説明できない。
たぶん、長く一緒に釣りをしているうちに、「道具を持っていく」という感覚ではなくなってしまったのだと思う。
そこにいるのが普通になった。
そんな一本だ。
このロッドとの思い出や、もし今このロッドが折れてしまったら代わりになる一本はあるのか。その話は、以前の記事でもう少し詳しく書いている。
▶ もし、このロッドが折れたら。現行パックロッドを探して、長年使った相棒の凄さに気づいた。
3本目。「万能な一本」が欲しかった
その次に買ったのが、アブガルシアのクロスフィールド。
たしかMLクラスだったと思う。
この頃は、スピニングでいろいろな釣りに使える万能な一本が欲しかった。
一つの魚、一つの釣り方に絞るのではなく、とりあえずこれを持っていけば何かできる。
そんなロッドを探していた。
実際、キジハタやオニカサゴなど、ロックフィッシュを狙う釣りでは活躍してくれた。
でも不思議なもので、「何にでも使える」と思って買ったロッドほど、いつの間にか出番が減っていった。
ロッドが悪かったわけではない。
ただ、自分の釣りが少しずつ変わっていったのだと思う。
結局、この一本は友人へ譲った。
今、僕の手元にはない。
だからといって、失敗した買い物だったとは思っていない。
使ってみたから、自分がロッドに何を求めているのかが少し分かった。
手元を離れていった道具もまた、釣りの途中にあった一本だ。
4本目。パックロッドで、本気の釣りをするようになった
そしてMOBILITY GAME GR III 986MH。
この辺りから、僕の中でパックロッドの意味が少し変わってきた。
電車に持ち込みやすいから。
旅行へ持っていけるから。
そんな「持ち運びやすさ」だけではなく、普通に主力のロッドとして選ぶようになった。
986MHは、ショアジギングにも使う。
ぶっ込みにも使う。
ハタも狙う。
この一本で釣ってきた魚を思い出してみると、なかなか節操がない。
ハタ。
カサゴ。
アナゴ。
タコ。
シーバス。
カレイ。
ショゴ。
イナダ。
マゴチ。
ウツボ。
そしてエイ。
「パックロッドだから、このくらいまで」と考えて使った記憶はあまりない。
その日にやりたい釣りがあって、それにこのロッドを持っていく。
気がつけば、そういう存在になっていた。
最初の頃は「小さくなるから便利」だったパックロッドが、この頃には、釣りをするために普通に選ぶロッドになっていた。
今ももちろん現役だ。
5本目。長く海に立つために選んだ966MH
そして、去年加わったのがMOBILITY GAME GR III 966MH。
最近のメインどころだ。
これまでに釣ったのは、アカハタ、カサゴ、ショゴ、イナダ、サバ、アナゴ、ウツボ。
まだ986MHほど長い時間を一緒に過ごしたわけではない。
それでも、買ってよかったと思っている。
理由の一つが、軽さだ。
僕の釣りは長時間になることが多い。
朝だけ少し投げて帰る、というより、海へ行けば何時間もロッドを振っていることが多い。
そんな釣りをしていると、ロッドの重量や持ったときの負担は、カタログの数字以上に効いてくる。
同じMHクラスでも、986MHと966MHでは長く使ったときの感覚が違う。
966MHを使うようになって、身体への負担が少し減った。
昔なら、もっと強いもの、もっといろいろできるものを選んでいたかもしれない。
でも今は、長く海に立っていられることも、道具の性能の一つだと思っている。
それが、最近このロッドをよく手に取る理由だ。
この記事を書いた翌日、また一本思い出が増えた

この記事を公開した翌日。
特に予定していた釣行ではなかったけれど、「たぶん釣れないだろうな」と思いながら、ふらっと杉田臨海緑地へ行った。
持っていったのは、もちろんこの966MH。
リールは25アルテグラ4000XG。PE1.5号に25lbのリーダー。
いつもハタを狙っている、そのままのタックルだ。
せっかくなので、DAISOの18gメタルジグを投げてみた。
すると、30cmほどのショゴが掛かった。

本格的なショアジギング用に組んだタックルではない。
それでも18gくらいのメタルジグを投げて、このくらいの青物と遊ぶなら十分に楽しい。
魚を見ながら、ふと思った。
「ショアジギングも、もうこのタックルでいいんじゃないか。」
ハタを狙いながら、青物が回ってきたらメタルジグを投げる。
秋の海なら、そんな釣り方も面白い。
966MHを買ってよかったと思う理由が、またひとつ増えた。
……と、気持ちよく終わるはずだった。
帰り際、ロッドを見ると2番ガイドが抜けていた。
メタルジグをシャクっている途中、知らないうちにラインがロッドへ絡んでいたことが何度かあった。
それが原因だったのかは分からない。
ただ、ショアジギングのようにロッドを大きく動かす釣りでは、ラインがティップ側へ絡んでいないか、もう少し気をつけた方がよさそうだ。
帰りにそのまま釣具店へ立ち寄り、966MHは修理をお願いすることになった。
この記事を書いたとき、僕はこのロッドについて、
「966MHは、今の僕が海で過ごしている時間につながっている。」
と書いた。
まさか、その翌日に続きを書くことになるとは思わなかった。
ショゴが一匹増えて、ガイドがひとつ抜けて、今はしばらく修理中。
どうやら、この一本との話はまだまだ続くらしい。
5本並べてみたら、釣り方の変化が残っていた
こうして5本を順番に思い出してみると、不思議なものだ。
最初は電車釣行のためだった。
コンパクトになることが便利だった。
そこからライトゲームをするようになり、万能な一本を探し、本格的にハタや青物を狙うようになった。
そして今は、長時間の釣りを少しでも快適に続けられる一本を選んでいる。
ロッドが変わっただけではない。
そのとき自分がどんな釣りをしていたのかが、そのまま残っている。
ワールドモンスターを見ると、三春町でカサゴが釣れるまで帰らなかった頃を思い出す。
Multi Tripperを見れば、いろいろな土地へ持っていったことや、観音崎の29cm、そして杉田臨海緑地から自分で海へ帰っていったあのメバルを思い出す。
クロスフィールドには、万能な一本を探していた頃の自分がいる。
986MHには、パックロッドで魚種を問わず本気で遊ぶようになった時間がある。
そして966MHは、今の僕が海で過ごしている時間につながっている。
パックロッドが好きなのではなく、持っていけることが好きなのかもしれない
この記事を書きながら、ひとつ気づいたことがある。
僕は「パックロッド」という道具そのものが好きなのだと思っていた。
もちろん、それも間違いではない。
継数の多いロッドを組み上げる感じも好きだし、小さなケースから一本のロッドになるのも面白い。
でも、たぶん一番好きなのは別のところにある。
行きたい海へ、持っていけること。
最初のワールドモンスターを買った頃は、それが電車だった。
ロッドをコンパクトにして始発に乗り、横須賀の海へ向かった。
今は車で釣りへ行くことが増えた。
それでも磯へ入るときには、駐車場からポイントまで長い距離を歩くことがある。
そんなとき、短く収納できて、両手をなるべく自由にしたまま歩けるパックロッドはやっぱり便利だ。
そして、僕は釣りとキャンプを一緒に楽しむこともある。
テントや寝具、キャンプ道具を持って、そのうえ釣具も持っていく。
そんなときも、コンパクトになったロッドなら他の荷物と一緒にまとめやすい。
リュックの外側へ取り付けて、そのまま次の場所へ歩いていける。
考えてみれば、移動の仕方は変わっても、やっていることは昔とそれほど変わっていないのかもしれない。
釣りたい魚がいる場所まで、自分の道具を持っていく。
電車で横須賀へ向かった頃も。
遠くへ出かけたときも。
キャンプ道具を背負って海へ向かうときも。
磯まで歩いていくときも。
メバルを探した夜も。
ハタを追いかけた夏も。
「持っていける」から、その先で何かが起きた。
魚が釣れたこともある。
釣れなかったこともある。
折れたロッドもある。
友人のところへ行ったロッドもある。
今でも毎回のように持ち歩いているロッドもある。
そう考えると、僕が集めてきたのはパックロッドではなく、そのロッドを持って出かけた先の時間だったのかもしれない。
次に海へ行くときも、たぶん何本かのパックロッドを車に積む。
その中には、結局使わない一本もあるだろう。
それでもいい。
海へ行ってみなければ、何が起こるか分からない。
そして、その一本を持っていったことで出会える魚がいるかもしれない。
昔、始発電車にロッドを積んで海へ向かったときと、そこだけはあまり変わっていない。
あの頃より、道具は増えた。
釣り方も増えた。
少しは魚の釣り方も分かるようになった。
それでもまた、ロッドを持って海へ行く。
その帰り道に、またひとつ思い出が増えていればいい。


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